浮浪雲
困りごと
人生には大小問わず困ったことが必ず起きる。でもそれを困りごとだと認識しているのはあなたしかいない。すべては「あなたにとっての」困りごとであって、他の人にとってはおそらくは「どうでもいいこと」かもしれないね。実際に困っているときにはそんな悠長なことを言ってもいられない。あなたにとっては、それらは絶望と不安で一杯になっているからだ。それはとても変だと気づくだろうか。例えるならば、あなたの頭上だけに雨雲が発生して、あなただけに豪雨を浴びせているようなものだ。おそらくあなたという範囲から一歩でも外にでれば、快晴となっている。それを間違えて捉えると、あなただけが世界の中で一番不幸だとさらに困りごとが強化されてしまう。なかなか難しいことだろうけれども、ちょっと心を落ち着けてその状況を改めて外側から見て、あなただけの雲から一歩でも離れることができれば、その暗雲から逃れることができることがすぐに分かるんだけれどもね。
あなたという雲
そう、結局は困りごとのすべてがあなたが生み出した暗雲だということがわかるかな。それはあなたの頭上にしか現れないし、その範囲は極めて狭いものだ。そもそも発生しないようにするのが一番だね。けれども、どうしても雲を防ぐことができないとしても、影響範囲はあなた限定だ。なら、結論から言うとあなたから離れることができれば、不安の雨に打たれずに済むわけだ。そしてその方法としては、趣味に興じたり、身体を動かしたり、あまりおすすめできないけれども、ちょっと晩酌をしたりしているだろう。それらは一時的にそのあなたの雲から逃れることができる。もっと言えばその雲を消滅させるパワーさえある。ところが、やっぱりあなたは再び雲をわざわざ浮かべてしまう。なぜならあなたをそこに生み出してしまうから必然的にそうなるわけだね。
なにもない
そもそもあなたはどこにもいない。それが証拠にあなたは何者という問いに答えられない。どうやっても言葉でも絵でもあなたをすべて表現できない。それでもあなたはあなたがそこにいると信じ込んでいる。だからあなたという雲を生み出すことは、あなたそのものでもあるということだ。そしてその雲は残念なことにあなたしか見えない。だから実はその雲自体もあなたという幻想そのものということになる。となると、困りごとのすべては、幻想でしかないわけだね。要するに変にあなたにしがみつくこと自体が困りごとなんだ。それがわかれば、あなたはあなたをやめてみればいい。よくよく考えてみれば、身体を動かしたり、好きなことに夢中になったり、お酒を飲んだりする一番の効能は、その瞬間にあなたがどこにもいない正常な状態になっていることだ。それはまさに真実であり、極めて自然な状態だといえるね。