あの夏の日のように
漂流
海が好きなあなたは知っている。海では当たり前のように波は常に大小問わずに打ち寄せているね。あなたはそこで海水浴をしてそれを楽しんでいる。砂浜に上がってぼんやりと水平線を眺めながら過ごしているときには、海風を感じている。やがて太陽が傾いてくると陸風に変わっていくわけだけれども、それを何も考えずに楽しんでいる。すべてがそこに集約されているように、海に出ても大きな波や小さな波が押し寄せてくるのをそのまま受け止めているし、砂浜では風の向きがかわることや、その強弱すら心地よい。それがまさにありのままのあなたであり、そこに良いも悪いもなくすべてが心地良い環境の中にいるはずだ。そんなのんびりした休日を離れて、また日常に戻るとなぜかそんな変化に点数をつけてしまうのは不思議なことだ。できれば日常でもすべてをまるごと感じて、心地よく過ごせるといいのにね。
変化
物事は常に変わり続けていて、とどまることをしないのが通常だ。ところが、あなたはなぜか限定された状況下で、できればずっとそのままでいたいと欲を出してしまう。それをやろうとするがあまりに、すべてが不自然になってどうにもこうにも収拾がつかなくなって一人勝手に苦しみを感じている。でも休日のあなたは、そんな変化を含めて楽しんでいる。全く真逆な行為をずっとこれまで気がつかずに続けてしまっている。あの夏の日の休日のようにしなやかに変化を受け入れて、そのどれもが愛おしく素敵な時間だと思えばいいだけなのにね。よく思い出してほしいのは、そういう変化が絶え間なく訪れるからこそ、あなたは心の底からリラックスできたわけだし、それがこの上もなく心地よかったはずだ。だから、何かをずっと同じ状態にしようとするのは、自然の流れからあなたは置いてけぼりになっている状況と等しいわけだ。自然の流れと一体になれるからこそ、大きな波でもあなたは楽しめる能力が備わっているというのにね。
日没
やがて日が暮れ、あなたは荷物をまとめて家路につく準備をしている。もうあれほど強かった日差しもとても柔らかなものとなって、それをまるで手助けしているかのように感じている。しばらく海を見つめながら、また今度くるときの海はどんな様子なんだろうかと思いを馳せている。そこには思い出だけを残して特に未練や後悔なんてなく、清々しい気持ちしかない。また来年もきっと楽しめるに違いないとそこには微塵の疑いもないからだね。そんな風にいつもの暮らしでも、仕事上でも感じ続けていられるならこれほど穏やかで幸せな時間はないだろう。そう、あなたはすでにこの大自然の大いなる脅威と変化の中で、それに柔軟に対応する力を持っている。それに気がつけば、家に帰ってまたいつもの日常が始まったとしても、なんにも変わらずずっとあの日の夏の休日のように心地よく過ごせるはずだね。