不都合な真実
破壊
家電でも何気ない日常品でもずっと長持ちするといいと思っている。ところが経年劣化だったり、ある日突然だったり、その設計だったりである日突然壊れてしまう。これはモノに限らず、人間関係や社会的な地位や名声も同じことだね。でも、それで永遠に壊れないと何も変化が起こらないのも事実だ。販売メーカーは本気を出して一生使える製品ばかり発売してしまうと、おそらく行き渡った頃には倒産してしまうだろう。人間関係もずっと良好であることを願ってやまないのだけれども、多少の軋轢や亀裂が生まれなければ、そこから始まる次の新たな出会いは生まれない。同じようにずっと幸せでいたいと切望しているけれども、たぶんそれが実現したところであなたはわざわざそれを破壊して、今が幸せであるということを確認したい衝動に駆られてしまうだろう。
武勇伝
戦後復興で目まぐるしい経済成長を遂げたと習っただろう。焼け野原から近代都市へと駆け上っていった時代が称賛気味に紹介されることが多い。もしくはどん底から這い上がった成功者の物語にあなたは夢中になっただろう。恵まれた人がそのまま恵まれた人生を歩んだところで物語としての魅力は感じにくい。そんなことよりも不運で貧困な境遇から、成功者に成り上がった物語の方が受けがいいね。その大逆転劇はいつの時代も大人気なのは、おそらくその不運な境遇をあなた自身と重ね合わせて、あなたにもワンチャンそれが可能なのかもしれないという夢をそこに見出しているからだ。実際はそんな夢物語をどれだけ真似てみても同じようなことが起こらない。それはそこに含まれていないラッキーだったパラメータがすべて捨象されているからだね。そう、すべてがそこに描かれているわけではなくむしろわざとそうしている。
悲劇の主人公
そこでそんな物語にもならない日常をあなたは呪い始める。なんてつまらない人生なんだと嘆いている。他人の成功物語ばかりに憧れて、いまあなたがそれを楽しめる最高の境遇であることを忘れてしまっている。そうじゃなくてそういう物語を味わえるということは、実はあなたこそが最高に幸せの真っ只中にいる。そんなことはないと反論したくなるだろうけれども、本当にあなたがどん底にいるのならば、それさえも出会うこともないし、憧れたり楽しむことすらできないはずだ。誰かを羨ましく思えたり、誰かとあなたを比べたりできる状態こそが、実はあなたはそれら以上の境遇にいる証拠なんだ。けれどもそれをまたあなたはわざわざ捨象して、それをひた隠しにして不幸の主人公を演じ続けている。もうそんな茶番はたくさんじゃないかな。素直にあなたは今が最高だと白状すると良いと思うんだけれども、やっぱりまだその演技を続けたいですかね。