文明の板
こだわり
あなたがあなたらしさや好みなどにこだわっているのは、実はとても不自然なことだ。そうだからちゃらんぽらんに生きていたり、好き勝手わがまま放題だったりする隣人にはひどく腹が立つし、そもそもどうやっても受け入れ難い存在だね。しかし、なぜあなたはそれほどまでに拒絶するのだろう。別に気にもとめなければいいだけのことなのに、もう腹が立って猛烈な嫉妬を抱いて抑えようがない。実はそこに人生のヒントがあるわけだ。猛烈に嫌いな存在がそれも身近にずっと存在して、そこから簡単には逃れられない状況というのは、実にあなたに対する重要なメッセージを発信してくれている。あなたがにわかに信じがたい存在があるということは、逆にあなたは不自然な状況をわざわざ選びすぎているという警告でもあるからね。
SNS中毒
現代では常にスマホというスーパーコンピューターを皆が携えている時代だ。そこで繰り広げられるあなた好みにチューニングした情報の数々は、あなたのこだわりを増幅することで快感に変わる。エコーチャンバーとかと呼ばれるそれは、あなたのこだわりを正当化しどんどん補強して揺るぎないものに変えてしまう。そうするとあなたと違う存在はもはや全く持って不要なものどころか、害悪でしかないという錯覚に陥ってしまうね。あなたが見ているその板状のコンピューターはあなたにそういった種類の快楽を常に提供してくれるわけだから、あなたもそれに夢中になって、現実社会なんかよりもその板の中の方が真実味を強く帯びてしまう。さらに悪いことにその板を使いこなせないと情弱だとか老害だとかいって揶揄されるような援軍までしっかりと用意されている。もはやあなたはその罠からそう簡単には逃れられないかもしれない。
五感
どんどんそうやって暴走気味で進化していくネットワークとそれを処理するスマホによって、自然で構成された本来の現実社会の比率がどんどん減っていっていることに気がつくだろうか。もちろんネットも仮想現実ではなく、昨今のように現実社会と同義であり、ちょっとしたいたずら心でやったことには大きな代償を払わなければならない段階になっている。一方でちょっとした有名人のスキャンダルなんかでも、本来罪でもないようなことを架空の正義感がそれを叩き潰して大いなる償いが必要にもなったりしている。ほら、ネットももはや現実社会だと思ってしまうのは無理もない。でもその板はあなたのように五感が備わっているわけでもなく、せいぜい視覚と聴覚とブルブル増える触覚ぐらいだね。一方で本来動物としてのあなたはその限られた情報から残りの感覚を補完することで現実と同列化する能力が備わっている。自然に生きることを取り戻したいのなら、ちょっとだけそのスマホという石板を手放すといいかもしれないよ。