他力本願

日々

陰影

光ばかりの世界では、あなたは光で埋もれて存在すらおぼつかなくなる。光による影によってあなたがそこにいることがはっきりと浮かび上がるわけだからね。だから、できれば良いことばかりの幸せいっぱいの人生をと願うことは、逆に言えばあなたが消えてなくなってしまうことを願っているのと同義だということだ。平穏でのんびりと過ごしたいとずっと願っているのも、結局のところ仮にそれが叶ったらあなたは夢か現かわからない世界となって、おそらく少しの間でさえ耐えきれず脱出したくなるのは目に見えている。結局のところ、あまり変動が大きすぎず、でもジェットコースターのようにギリギリのところでスリルと喜びが同居するような人生を望んでいるということになる。そのバランスは絶妙であればあるほど虜になるわけだけれども、だからといってあなたにとって程よい変化と刺激でさえすぐに飽きてしまうのも知っている。

不幸の原因

そういうあなたを中心とした希望がどんどん強くなればなるほど、どんどん現実の大きな変化とは対立することになって、いつの間にか一人ぼっちになっている。それはあなたがベストだと思いこんでいるそれがどんどん固定化してしまうからだね。周りはどんどん変化して流れ続けているにも関わらず、相変わらずあなたはその望みをアップデートすることがない。だから、あなたばかりに固執して注目している間に状況は刻々と変わっていくとすれば、その変化を嘆く暇があれば、あなたをそれに合わせていくことが必要となる。なのに大抵はあなたに注目しすぎるがあまりに、なにもかもあなたのせいに思ってしまう。するとすべてが不足の世界となって、それを埋めるためだけの毎日となってしまう。そう、それがあなたの不幸の原因だね。

中庸

大きな喜びを得るためには、それと同じくらいの苦や不幸が必要だし、大きな苦しみを忌み嫌うのならば、大きな幸せを求めない方が良い。小さな変化で十分だと仮にあなたが勝手にそう思ったところで、状況がそれを許さないときもある。なら、そこそこの幸せの人生を穏やかに過ごすためにはどうすればいいのかと途方にくれるだろう。そのすべてはあなたが生み出しているとすれば、あなたを消してしまえば手っ取り早いね。実際どうにもコントロールできない様々な出来事で右往左往するぐらいなら、すべてを柳のようにしなやかに受け流すことができれば、その柔軟さで上手にかわすことができるわけだ。でもその柔軟さを求めてしまうとまた元通りの思い通りにならない不幸を生み出してしまう。その柔軟さもあなたの意思ではどうにもならないわけだ。その真髄が「他力本願」と呼ばれるものだね。すべてはあなたと関係ない何かがあなたを生かしているのであって、同時に実はあなたもすでにここにはいないのと同然だというわけだ。