見上げた空は青かった

日々

見上げた空

バタバタ慌ただしくすぎる日々を過ごしているね。それでふと空を見上げるとその青さに改めてハッとする。こんな都会の片隅からでも、意外と空は青かった。いや、あなたの心の世界はねずみ色に濁っていて、当然見上げる空もそれと同じだろうといつの間にか思い込んでいたからね。ゴミゴミして世知辛くて、慌ただしく人は動いている。道路には埋め尽くすような自動車が走り、郊外の工場の煙突からはモクモクと煙が上がっている。何をどうしているのか知らないけれども、日々大量の何かを生み出しているようだ。そんなだから、すべてが灰色にくすんでいると思いこんできた。そんなあなたをまるであざ笑うかのように、真っ青な空がそこに広がっていた。あなたはそれを見て、しばらく合点がいかなかったわけだね。

満ち足りた街

そう、この大都市にはすべてが揃っている。お金さえあれば何でもすぐに手に入れることができる街だ。そういう人にはとても合理的で便利だと言えるね。ところがほとんどの人にはあまり関係のない街でもあるね。そう、すべてが揃っていなくても、十分に幸せだからだ。お腹いっぱい食べたらしばらくはご馳走を必要としないように、それこそ有り余るモノやサービスに囲まれたとしても、それらを全部楽しむわけにはいかないからね。それでも欲望が渦巻く都会の中心で、多くの人がアクセク動いている。それにつられてあなたも負けないように、忙しい毎日を送っていたわけだ。それこそ空を見上げることすら忘れるほどにね。でも一方で、都会の片隅で空を見上げてその青さをのんびり楽しんでいる人もいる。都会の空は土がない分雲が少ない。だから実は比較的他と比べてもとっても青いんだ。

一息

そんな瞬間に、あなたは大きな息をする。普段は一息つくことすら忘れているからね。改めてあなたは息を感じている。当たり前のことだけれども、あなたはずっとそうやって息をしてきたわけだ。けれども、ずっと息をしていることすら忘れてきたね。何もかもあなたはあなた自身を見失って、人の流れの中にいて、その流れに遅れまいと必死にもがき続けてきた。それに疲れてちょっと一休みすると、何もしないでいることに怯えてしまう。かと言って走り続けていても、思い通りにならなくて理想と現実のギャップに失望し続けてしまう。やるもやらないもどちらも苦悩となって身動きとれなくなったね。そうしてふと空を見上げたわけだ。ずっと空はそこにあり、そんなあなたを見守り続けていた。何をどうやってもうまく行かないあなたをずっと前から全部見ていたわけだ。だからあなたはまさにその深い青さに飲み込まれたんだね。