薄暮に生きる

日々

光の中で

あなたがあなたがいることを確認できるのは、あなたに光が当たっているからだね。そしてあなたが動けば影ができる。そしてその影はあなたが動く度に同じように真似して動く。それを見てあなたは安心しているわけだ。幽霊には影がない。魂にも影がない。でもあなたがそこにいれば影ができる。光が当たっているところばかりに普段は注目しがちだけれども、あなたのせいで必ず影ができるね。スマホで自撮りしようとしたときに、影ができて鬱陶しく思ったりもしているけれども、逆に言えばあなたが光に照らされている証拠でもあるね。そうやって、光が当たる場所ばかりに意識が向かってしまうわけだけれども、光には影が必ずセットで起こることは知っているだろう。

影がない世界

でもあなたは、できれば明るく照らされている世界だけを願っている。そう、幸せいっぱいな世界をね。ところが、幸せにスポットライトが当たれば当たるほど、その反対には色濃く影ができてしまう。逆に暗闇にあなたがいると不安になるのは、あなた自体がどこにいるかということを確認できる術が失われてしまうからだ。あなたにはまるで主人公のようにきらびやかなスポットライトが当たり続けることを願っている。でも、経験があるならわかるだろうけれども、強い光の中にいるあなたには、周りの様子がまるでわからなくなってしまうね。強すぎる光もまた、あなたを不安にさせるようだ。影なんて世の中からなくなってしまえばいいのにと思っている癖に、強い光を浴びたいとも思っているのは滑稽な話でもあるね。

風が吹く

風は穏やかに吹いていると心地よく感じるね。でも強い風は命の危険さえ感じてしまう。それと同じで、あまりに強い光はあなたを混乱させてしまう。なら、ほどほどの光を浴びているのが心地よいだろう。もちろん穏やかな光はうっすらと影を生じさせるけれども、何事もほどほどが心地良い。心地よい風の中に佇んでいるように、ぼんやりとした光と薄い影の中にあなたがいるのが一番なんだ。どちらかを極端に際立たせようとすると途端にうまくいかないのはそのせいだね。幸せはほどほどが一番なんだ。そもそもあなたは光の世界にずっといる。ときに暗闇にいることもあるけれども、それはいっときのことでしかない。暗闇も悪くないのはあなたの影が消え去っている瞬間でもあるからだ。そうなると何が一番困る状況かと考えてみると、強すぎる光を浴びているときになるわけだ。すなわちぼんやりとアンニュイに生きるのが実はベストだということでもあるね。