不足は充足の中にある
足元
身近過ぎて見えているけれども見えていないことがたくさんある。それを他の人から見れば羨むほどの幸せだと言う。けれども、あなたにはあまりにも当たり前過ぎてそんなふうに考えたことすらない。だからもっと遠くに幸せというものがあるはずだと、いつも周りをキョロキョロと見渡している状態にある。でも、本当の幸せはそんな遠くにあるわけではないし、それに近づこうとすればするほど夜空の月のように、どんどん離れていくわけだ。だからあなたは思い通りにならないこの世をいつも憂いでいる。もうあなたの足元にすでにたくさんのそれらが転がっていることすら気が付かずにずっといるわけだ。
足るを知る
そういう意味で先人たちは、すでにあなたが持っているものを見つめなさいと言っている。あなたと同化しているそれらは、あなたが見ようとしないと全くわからないままだからね。すでにあなたはいろんなことに恵まれているし、日常生活にはそれほど困らないほどの力を備えている。そうだから故に、それらを所与のものとしてそれ以上の何かを求めることができるわけだ。そしてきっとあなたにとっての至上の喜びは、そんな近しいところにはなくて、もっともっと遠い存在だと勘違いしている。それを夢と呼んで、それを追いかけることが幸せになれる唯一の道だと思いこんでしまっている。だから夢と希望を持てる素晴らしさがそこにあるのだけれども、あなたは微塵にも感じないままこれまで生きてきたわけなんだ。
取るに足りない小さなこと
ちょっとしたことに躓き、嘆き悲しみ苦しむことができるのも、その他が十分だからこそなんだ。だからそうなることが全く持って不幸なわけではなく、そんな些細なことに心悩ませることができるなんて奇跡に近いわけだ。もちろんそれは人によって千差万別だろう。けれども、あらゆる不足を感じるためには、まずはそれ以外が充足していないと無理な話だね。だから心悩ませ、とても悲しいときにできればあなたがすでに持っているものに注目してみるといい。高くはないけれども衣服があり、外に出かける事ができる靴があり、夜露を凌ぐ家がある。ご馳走ではないけれども食事をすることができ、希望の職ではないけれども働くことができる。それらはすべてあなたを支えている存在に違いはない。もちろん、もっと良いものは探せばたくさん見つかるだろう。でもそうやって探そうと思えるのも、今が危機的な状況ではないからだね。だからといって探すなというわけではない。大いにそれらを楽しむことが今あなたが人生を楽しんでいるということなんだからね。