何もない幸せ
何もない
これまであなたは必死に生きてきたね。けれども振り返ってみれば、富も財産も地位も思ってたのと違う。あの苦労を鑑みるにもっとあってもいいのではないかと陰鬱な気分になってしまう。結局どれもこれもすべて無駄骨だったのかと認めるのも悔しくて、どうしてこんなくそったれの人生なんだと不幸の色に染まっている。でもあなたは全くもって勘違いをしている。一番の収穫をすでに手にしていることに気がついていない。それはそうやってどん底で、収入も減り続けて、生活を質素に変えざるを得ないことこそが、すべてを持っているのと同じことだからだ。そう、どん底に足をつけて耐え抜いた日々によってあなたはすでにすべてを手にしている。いきなりそんなことを言われてもにわかに信じられないのは、いつもちょっとしたわずかな地位や財産を守るがために、ややもすればあなたの意に反して好まないことばかりをしてきたからだね。
真の幸福
豊かさが幸福の象徴だとずっと勘違いして、ようやく得た何かを今度は誰かに盗られないように必死に防衛する毎日だった。よく考えてみればわかるように、そんなことで人は幸せに近づけるわけもないね。わずかなご褒美に右往左往しても、大いなる自然のパワーによって一瞬にして状況は目まぐるしく変わるのだから。豊かさの実体とは、何も持っていないけれども生き抜く力があるという実感であり、やぶれかぶれで変なプライドをかなぐり捨てて真っ裸でチャレンジしてみると、今まで感じたことがないような身軽さがそこにある。そう、本来の幸せとは何かを守り続けるるような過去に縛られて今を生きられないことではない。今ここを十二分に楽しむことができるのが真の幸せであり、そのときのあなたはまさに無敵モードなわけだ。全くもって、いつからそんな偽桃の豊かさにしがみつくようになったんだろうね。
持たざる幸せ
そうやって必死に守ったところで、まさに一握の砂のようにあなたの手から失われていく。それは、そもそもそれらの豊かさは幻想であるという証拠でもあるね。あなたが大切にしているそれらは、すべて幻でありそもそももとからないものだった。それよりもあなたは何も持たずにこの世に生まれ、生きて死ぬということが全てだったわけだ。それを不意に訪れるあなたにとっては最悪な状況がずっと教えてくれているわけだね。そして全ての固執を手放したときに、あなたが真の幸せの意味に気づく。でもまたしばらくそれで少しばかりうまくいくと、また元通りに必死にそれにしがみつくことの繰り返しをしてきているだけだね。もうそんな馬鹿らしいことから開放されて、本来の地に足つける喜びを取り戻そう。そこがあなたの原点であり、そもそも幸せだった場所なんだからね。