空っぽのあなた

日々

原点

あなたは何もないところから生まれてきた。そこがあなたの原点とも言えるね。そこから人生というものが始まったとして、それで自我が芽生えてあなたはあなたとしてどうかという問題に日々直面し続けている。そのせいか、あなたがやったこと、経験が積み上がって行き、それをキャリアだとか言って自慢するようになる。それはあなただけにとどまるものではなくなり、誰かと常に比べなければならないようになってしまう。そこで得たもの失ったものを指折り数えて、どっちが勝ったか負けたか、あなたの方が得をしているのか損をしているのか、そんなことばかりでいっぱいになっている。ある日突然あなたの思いも寄らないところに空白が見つかると、なんとかそれを埋め合わせしようと必死になってしまう。その結果、それで安心するのかと思いきや、埋め合わせをすればするほど苦しくなっているわけだ。

手放し

だから、ときどきあなたはこれまでのそれらをリセットできればと思い始める。それが希望であり願望としてあなたの眼の前に現れるわけだ。このままではいけない、この先これではやっていけないという恐怖から、それらすべてを手放そうとする。ところが、どれだけリセットを試みようとしても、どうしてもあなたの自我がそれを邪魔をする。だから、空っぽの原点に戻ろうとすればするほど、空っぽであるということにとらわれてしまって結局のところどうにも救われない状況に陥ってしまうわけだ。そこでそれらを紛らわせるために、娯楽を求めたり、快楽を求めてわざわざ寿命を削る行為にふけることになる。その悪習慣を断ち切るという希望もまた、積み上げてしまうことになって、あなたはいつのまにか良いことだけではなく、清濁併せ呑むように希望とは真逆のストレスを溜め込んでいくわけだ。

カバンの中身

そもそもあなたは空っぽであり、なにもなかった。だから何かを得ようと経験を積んできた。それらがたくさん集まったならば、あなたは豊かになり幸せになると信じてきたからだ。ところが、それと同時にあなたというカバンにいろんなものを取り込んでしまうと、そのカバンがとても重くなって身動きが取れないようになってしまった。だから、時折整理しようとカバンをひっくり返すわけだけれども、そこに入っていたのは夢や希望の原石だと思っていたそれらをよく見てみると、なんのことはない路傍の石でしかなかったわけだ。そんなものを後生大事にずっと持ち歩いていたわけだ。それらを打ち捨ててなくなるときに、皮肉なことに幸せを感じているわけだ。ときにはそれらをなくせないために、他人の悪口を言ったり、無意味な娯楽に興じたり、酔っ払うまで酒を飲んだりして、そのストレスを解消しているわけだ。それもこれもそもそもの空っぽに戻りたいがためにね。