言葉とあなた

日々

言霊

なにかを伝えたり、何かを思案したりするときに、言葉がなければどうすることもできない。だからいつもあなたは言葉の世界に生きているわけだ。けれども、その言葉はあなたのすべてを表現するにはあまりにも制約が多すぎて、万能なツールではないね。言葉にできないことをなんとかメタファーや表現の工夫によって、少しでもあなたのあるがままの思いを言葉に置き換えて紡いでいる。ときにはそれがうまくいったり、ときにはそれが誤解を生んだりする。これまでを振り返ってみても、そんなつもりで言った言葉ではないのに、それが独り歩きして思わぬ誤解を生んだ方が多いかもしれないね。それほどまでに強力で唯一無二の道具であるのだけれども、使い方一つ間違っただけで、取り返しのつかないことが起きたりする。言葉の便利さと引き換えに知らず知らずのうちに失った代償も大きいわけだ。

言語システム

言葉によって世界が構築されている人間社会において、愛する人への気持ちも法律もルールもすべて言葉化されている。それによって、考えることができ、吟味することができ、時には悪用して呪いの言葉を投げかけることさえできる。現代では色んな国の言葉がネットで一瞬にして世界中に駆け巡る世界だ。今流行りのAIであるChatGPTなんかもその正体はLLM(大規模言語システム)であって、まるでそこに万能の知識を持つ誰かと会話しているように使うことができるようになったね。そのことによってあなたがすべてを知らないとしても、あなたのためだけの物知り博士を手に入れたことになっていくだろう。そうやってあなたが使いこなそうとしていた言葉が、気がつけば言葉に支配される時代がもうすぐそこに来ているとも言える。

主体

それぐらい言葉はもはやあなたを支配するまでになっている。本来ならあなたが生み出した言葉をあなたが主体的に使いこなしていた状態から、今度はあなたが言葉に従属して生きている。これまではマスコミと言われるテレビや新聞・週刊誌ぐらいだったものが、もはや日常で欠かせないインターネット上でSNSにとって変わっている。それを欠かさず見ていないと時代に取り残されるなんて脅かされて、その恐怖から中毒になりつつある人までいるね。言葉の壁は文化や国境の代わりになっていた時代も、もはや遠い昔になりつつあって、瞬時に翻訳することでその障壁も溶けてなくなってきている。求めれば与え続けられる状態の恐ろしさは、いつの間にかあなたが言葉を操る主人の座を明け渡してしまうことだね。世界は言葉でできている。あなたがそれを生み出したわけだけれども、それが逆転して徐々に言葉があなたを支配しつつあるから、ますます言葉との距離を適切に保つことが大切になっているわけだ。それゆえ、あなただけの言葉を磨いていくことが、せめてもの抵抗だとも言える。