最終列車
最終列車
日常の喧騒も静かになって、夜の帳が降りてしばらくして皆が寝息を立てているだろう夜更けに、あなたはとある駅で最終列車を待っている。あれほど賑やかだったホームも人はまばらで、深夜の静けさとともにまるで別の時空に感じられるね。もうこれが最後の運行だという列車に乗り込んであなたは最終目的地へと向かう。大抵の場合は眠る場所である家のことが多いだろう。けれども、これから朝まで仕事だという人もいる。考えてみれば終わりも始まりもなく、それぞれの時間が止まることなく動き続けているわけだ。都会の列車は意外なことに、最終列車と始発はそれほど時間が離れているわけではなく、数時間後にはまた走り出すようなこともある。でもあなたはその最終列車に乗り込もうとしている。それがあなたにとっての今やるべきことの一つだからだ。
目的地
そうやってただ乗ることで、あなたは何もせず移動できるわけだ。もちろん、眠気に耐えきれず、うっかり乗り過ごしてしまえばしばらくはもう後がない。だからそれに緊張しているわけだね。都心の最終列車は通勤列車並に混雑して驚くことすらある。それほど多くの人がいろんな目的地に向かっているわけだ。さて、あなたもその一人で、目の前に眠ってしまっている乗客を見て少し心配になりつつも、あなたもそうならないように列車に揺られている。そして目的地に到着した瞬間にあなたのミッションはクリアになるわけだ。どこで区切ってもいいはずなんだけれども、最寄りの駅に着いたということで一区切りとして捉えているわけだ。あなたはその日の最後に何を思うだろう。ただただ疲労感だけで終わってしまうかもしれないし、すでに明日のことを考えているかもしれない。いずれにせよ、見えない区切りの線をあなた自身で引くことによって、あなたの一日は終わりを迎えるわけだ。
スタートとゴール
ゴールでもあり、次の日のためのスタートラインをあなたはあなたで引いている。これまでの終わりは新たな始まりだと言ってもいいね。結局のところ何かそういう区切りをつけないと一日という認識も危うくなるからそうしているだけのことだ。現代の暦では午前0時が始まりであり、終わりでもあると決めている。それも、単にそうしているだけで、あなたにとっての始まりは眠りから覚醒したときだろう。そうすると夜勤だと朝が終わりで夜に目覚めるだろうし、それこそ一日も逆転してしまうわけだ。夜明けとともに起きて、日が沈む頃に家路につくのが自然なことだろう。けれども、それがままならない人も現代においては少なくないね。自然に生きるということは、決して楽にできるわけではない社会で生きている。だからこそ、あなたがそれを決めるしかない。いずれにせよ、終わりも始まりもない連続した時空の中で、あなたが一番心地よいようにスタートラインもゴールも設定すればいいわけだ。