「今ここ」チャンネル
風がふいている
連日の報道やニュースで世の中は大変なことになっているとアナウンサーがいう。ネットでもテレビでも新聞でもラジオでも。そんな中、情報のチャンネルを変えると、ふいに素敵な音楽が流れてくる。ああ、なんだかよくわからないけれどほっとするような、懐かしいこの感じ。都会の喧騒を離れて里山に行くとセミの泣き声が聞こえる。川辺にはせせらぎの音が聞こえる。海辺に行くと波の音と潮の香りがする。全部知っている。知っているから心地よい。だから安心して、その中で季節の移り変わりを感じている。意識のチャンネルを、ネットやテレビではなく「今ここ」に合わせると、ずっと前からそうであったと全力で語りかけてくるよね。そして、そんなひと時を無心で楽しんでいる。
いろいろ知ったところで
いろんな問題がこの世の中にはあることは知っている。随分前からあまたある問題に触れてきたね。けれど、こうして心のチャンネルを変えるとなぜか懐かしい風が吹いている。なんだろうこの感じはと、自分がいる場所が一体どこなのかよくわからなくなるね。ここはずっと前から穏やかな風が吹いていたかのような錯覚を覚える。そりゃ、自然の怖さも多少は知っている。ニュースもそうだし、小さな体験としても知っているね。大雨や台風や土砂災害も一度起きれば甚大な被害をもたらすね。それでも、雨は必ず止むし、風は弱くなる。なんでもない日常が「今ここ」にはある。悲しいけれど、自然の驚異を十分に知っているからといって甚大な被害を防ぐことができるかというと、まだまだそうじゃないよね。
心の中はいつも嵐
心の中を吹く風と、「今ここ」に吹いている風はこんなにも違うことに驚く。知っている世の中はいつも脅威に怯えているんだけれど、「今ここ」はとても同じものだとは思えない。そのギャップが大き過ぎてなんだかよくわからなくなってしまうんだけれど、今感じている穏やかな懐かしい気持ちを大切にしたいね。心地よい風はちょっとでも強くなると急に怖くなるけれど、それは自分の心に吹く風も全く同じことだね。知っている風景は全部心の中で生まれている。心の嵐をおさめるためにも、「今ここ」にチャンネルを合わせてみることがおすすめだよ。