名優

日々

自然体

雨が降れば傘をさす。濡れたカバンはハンカチで拭く。家に帰れば着替える。そんなふうになんとも思わないままあなたはしっかりと対処している。けれども、雨がとても不吉で不幸なことだとあなたが決めつければ、途端にそれらは苦行になり、陰鬱な時間を過ごすことになる。あなたがこれまで不幸だと思いこんでいたものは、実はそういうことでしかない。ある人にとっては、まぁ、そんなこともあるだろうと気にもとめず自然に対処して、特に意識することもなく淡々とでやりこなしている。けれどもあなたにとっては雨が降ることが特別なことだと思い込むがあまりに、それらに適応して対処することにいちいち大げさに騒いでいるだけのことだ。もちろん、そうやって特に意味もないことに意味をもたせることで人生はより豊かになっていくのであればそうするほうがいい。けれども、その刺激を求めすぎるがあまりに、人生を台無しにしてしまうのはあまりおすすめできることではないね。

世間体

あなたが不幸だとか嘆くには、誰かに聞いてもらうためでしかない。その誰かもあなたのすぐそばにいてもいなくてもそうしたいわけだ。そうやって、あなたがどれほど苦労をしているかを共感してほしいと考える癖がついている。おそらくはそうすることで同情されて、よりあなたがそこにいることに気がついてもらえるからだね。そうやって、あなたはあなたを常に確かめている。でもその誰かも実はあなたが生み出した幻影であり、本当に実在するかどうかは証明すらできないままだ。もちろん、あなたは身近な人を思い浮かべたり、あなたが思う良い人が気がついてくれると信じている。けれども、実態としてはそうなっていないところから、それはあなたの中にしかいない架空の存在だろう。だからこそ、あなたはすべて兼ね備えている自らを正義のヒーローにしたり、悲劇の主人公にしたりと自由自在に演出することができるわけだ。

主体

そこで気がつくのは、とにかくあなたの人生は脚本・主演・演出・監督とすべてはあなたなんだということだね。雨が降ることがステキなことであればあなたは雨に歌うだろうし、雨が悲しみの象徴だと台本に書けば、あなたは雨に打たれる悲劇を演じきっている。何をどう思うか、どうそれを表現するかは、すべてはあなたが決めている。そしてそれを引き立てる脇役もあなたが思った通りの人たちをキャスティングしている。それらが全部そろって、ようやく人生という大舞台が成立しているわけだ。しかもそれは今もそうなっている。何も足りないことなんてないわけだ。そういう意味ではこれまでも、おそらくこれからもすべてが揃って完璧なストーリーが展開していくのに違いないね。あとはそこで演じているあなたが、充実した演技ができるかどうかにかかっている。しかも、気に入らなければいつでも書き換えることもできる。そう、一旦演じることをやめて、それをすべてあなたが段取りしていることを思い出せるならばね。そのことを忘れるぐらいに、あなたは素晴らしい役者として人生を演じきっているわけだね。