大役を果たす

日々

引き算

現代ではもっともっとといわゆる足し算することが良いことだとされている。資格をたくさん持っているとか、輝かしい経歴が多いとか、能力はどんどん身につけることが強みとなっている。ところが、それらはいずれ失うものとなる。単純にそれらの効果が発揮される期間が限定的だからだ。仕事ばかりで人生を追われて過ごしている人は、仕事がなくなった瞬間にすべてを失うだろう。役職や肩書がすべてだと思っていた人は、定年を迎えた瞬間に何者でもないあなたに戻るだろう。それが悲しいことだと思うかもしれないけれども、そもそもあなたは何者でもなかったし、偉くもなかった。だから元通りになるだけのことだ。それなのに、あれもこれもと必死になってあなたを飾り付けてきたわけだけれども、それらは永遠ではないことに注意したほうがいいね。かつては部長だったとか、取締役だっとか言ったところで、それは極めて限定的なものでしかないのだからね。

手放す

だから、それらはできれば早めに手放していくことこそが、幸せの近道でもある。形もないそれらの装飾は、いずれ陳腐化して使えないのだからね。何者でもないあなたに立ち戻ったときに、本当にあなたが安心できる場所を探したほうがいい。元通りになっただけで、何も失ってもいないのにも関わらず、あなたはその失った幻想で身動きがとれないようになる前にね。そういう意味では本当のあなたは何も武装していないあなたであって、それ以外は全くもって必要ないどころか、あなたを惑わせる邪魔なものでしかないからだ。そんなものに依存して幸せになれないのは明らかだ。何かを得たつもりでずっとこれまで四苦八苦してきただろう。けれども、それらも得たつもりになっているだけで、実はあなた自身には全く関係のないことだったわけだ。そういうと絶望的な気分になるかもしれない。それもおかしな話だ。だってあなたは何者でもないあなただからこそ、この世に生まれた奇跡の塊なんだからね。

夢の中

あなたはそういう人生の彩りにおいて、自由に楽しんでいた。地位や名誉もその一部であって、人生ゲームの一時的な役割を演じていただけのことだね。演じることができるのは、あなたがあなたであるからこそ芝居ができるわけだ。だからやっぱり本質的にあなたは何者でもないね。何者でもないから、何者にもなれる。それを忘れてしまってはいけない。あなたは今でも夢の中で何かを演じている。そしてその幕が降りたらあなたに戻るわけだ。あまりに役に没頭してしまったがために、終わるときにちょっとセンチメンタルになるだろう。けれども、何も失ってはいないのは間違いない。むしろ大役を終えてほっと一息つけばいいね。そういう意味ではお疲れさまという言葉がぴったりかもしれない。もう、あなたはそれに惑わされたり悩んだりすることもしなくていい。あなたらしくあなたを素直に生きるだけでいいわけだからね。で、気が向いたらまた何かの役を演じたらいいわけだよ。