仮面ライダー

バイク旅

ツーリングという旅

バイクに乗って見知らぬ場所を訪れる旅のことを、ツーリングと言うね。まぁ、移動手段の一つにわざわざ雨風にさらされ、虫がぶつかってきて汁まみれになり、体中泥だらけになるのがバイクでのツーリングの醍醐味とライダーは信じて疑わない。飛行機でひとっ飛びすれば数時間でたどり着ける場所にも、わざわざ数日感かけて走り続けるなんてどれだけマゾっけが強いんだと笑われる存在。それでもやっぱりバイクで走りたいのはどうしてだろうね。そのための理由を探しているんだけれど、それは説明のための理由づけなんで結局は「やってみないとわからない」というオチになる。体験したことがないことを言葉で説明することほど、不毛なものはないんだね。もちろん、やってみたけれど微塵にもその良さを感じない人の方が多いかもしれないし、意外とハマる人もいるかもしれない。言葉を尽くして説明しても「体感」を伝えるのは難しいよね。

ライダーという仮面

一方でバイクの良さを語るとき、実は隠していることもたくさんある。バイクの旅の良さを理解してもらおうと、懸命に説明しているときには絶対「辛い体験」を巧妙に隠しているんだよね。ほら、こんなにステキな場所でテントを設営して、自然を感じながら肉を焼いて、焚き火を見つめながらこれまでの旅の出会いを振り返る。とても贅沢な時間を過ごせるんだよ、なんて言うけれど、道中でにわか雨でずぶ濡れになって気持ち悪かったり、滑って転んで実は右膝が痛かったり、そういうのを隠しているんだよ。これは秘密だけどね。あえて苦労した自分をかっこよく見せるための仮面をみんなかぶっているのさ。自然と孤独を愛するライダーという仮面だよね。

快適な旅なんて

これだけ快適な旅を楽しめる時代に、あえて自然を感じて触れ合い、人類の知恵をフル回転させてどうにかこうにか旅を続ける俺かっこいい。そう思ってひた走る。ああ、ちょっと遠いな。だんだんお尻が痛くなってきた。今日はいい天気。いい天気すぎて気温が上がってとっても暑い。もう実はフラフラ。ちょっと休もうと道端で休憩したところで、その道端すら日に焼けて不快。なんかまたでっかい虫が顔に体当たりしてくる。油断して口を開けていると虫が飛び込んでくる。もうちょっと、もうちょっと前に進めば次のキャンプ場にたどり着けるから、それまでなんとか持ってくれ。あ、気がついたら燃料が少ない。まずい、この先にガソリンスタンドあったかなー。そう、颯爽と走っているというイメージの心の内は、もしかしたら普段より頭を悩ませる問題が山積みになっているんだよ。

かっこいいライダーという幻想

苦労しただけ、ご褒美があるって強がりを言うけれど、実はそんなことはない。苦労したという自負を演出することが好きなだけ。ただバイクが好きっていうだけでツーリングも楽しまなきゃという社会的なものさしに無理やり自分を当てはめているだけ。意外と辛いなと思いつつ、こんなことでへこたれるなんて、勝手に憧れている立派なライダーにはまだまだほど遠いと思い込んでいるだけかもしれないね。それでも、旅が終わったら、次はどこに行こうと考えはじめている自分もいる。結局は、辛いことと同じだけのステキなことは間違いなくそこにはあることを見つけるんだ。家でぼーっとしていても、バイクでツーリングしても何も変わらない。何をやってもプラスマイナスゼロだとしたら、わざとマイナスにしたりプラスにしたりして今ここを生きてることを確かめているようなものでしかない。でもそれを気づくには「行動」して「体験」するのが手っ取り早いかな。そう気づくための手段のひとつでしかないかもね。

心の中であれこれ想像するよりも 一度体験するのがよろし by 仮面ライダー

    良い子のみんなは、決してマネをしないでね。
    それと、仮面ライダーの仮面が辛かったら、安全のためにもすぐに外しましょうね。約束だぞ。