見返りの世界

日々

願望

あなたの望みを一つだけ叶えてくれるとアラジンのランプから飛び出した魔法使いが言う。さて、あなたはそのとき何を伝えるだろう。すぐには思いつかないだろうか、それともいつも強く願っているのですぐに伝えられるだろうか。そのいずれにせよ、最初の望みが一つ叶えられたあとは、恐ろしいほどの苦しみが待ち受けているに違いないね。そうやって最初の望みを叶えることによって、その願望の連鎖はとどまることを知らない。しかもそこから爆発的に拡散して、もはやあなたが思っていた以上の影響力を持ち始めて、やがてあなたでさえコントロールできないモンスターへと成長していくわけだ。まるで導火線に火がついた爆竹のように、一旦そうなれば途中で止めることはできない。それぐらい望みを一つ叶えることには慎重になる方が良い。もっといえば、一歩踏み込んで手放すことができればそれが一番だね。

無欲

仮にそうやってあらゆる欲望を手放すことで、願望のない世界を生きることができたなら、どんな人生になるだろう。おそらく、これまで一度も経験したことがない世界がそこに広がっているね。振り返ればあなたの願いがなかった瞬間なんて過ごしたことすらない。もっと楽しく過ごしたいとか、もっと愛されたいとか、もっと自信を持ちたいとか、そんなことを微塵にも思わなかった時間はほんの少ししかないだろう。一瞬それらを忘れて夢中になったことがあっても、すぐにあなたの思考は勝手に暴れ出して、もっともっとと言い始めてきたね。それであなたはなんとかそれらを叶えようと行動に移してきた。その結果、うまくいったという経験よりも、殆どの場合うまく行かなかったことが多くて、世の中は思い通りにならない大変な世界だと思っている。その発端を改めて考えてみればすぐに気がつくだろう。望みを一つだけ叶えてくれた魔法が、その後の地獄を引き起こしていることをね。

成就

なぜそうなるのか。さらに注意深く考えてみる。望みとは叶えたいことが未だ叶えることができないという、不足を表している。すべてが叶ったあとの世界に生きているあなたが、わざわざまだ叶わぬことを探し求めることで、どこにもない不足を生み出している。そこにとても負荷がかかっているわけだ。真っ平らな大地にわざわざ穴を掘って、ほらここが凹んでいるから平らにしたいと言っているようなものだからね。そうやって不足を探し、それを生み出すことで願いや夢が叶う条件が整うわけだ。となれば、願いや夢は良いことのように思われているけれども、実は諸悪の根源であるとも言える。夢や希望なんて捨ててしまって、無我の境地を生きなさいという教えてはまさにそのからくりを伝えてくれているわけだ。努力したから良いことがあるとか、ここまで我慢したからそれ以上の褒美が待っているとか、そんな自己中なわがままがまかり通る世界をまさに望んでいることになるからだ。