外部記憶装置

日々

スマホの効用

超小型モバイル高性能PCをいつでもどこでも好きなだけ使えるようにしたのがスマホだね。シンプルな携帯電話を多機能な超小型PCにしたのがスマホだと言ってもいい。さらに高速通信が可能になって、数多あるコンテンツを消費するのにとても便利なモバイル端末として世の中に君臨しているわけだ。もはやスマホのない生活なんて考えられないところまでその地位と役割は高まってきたね。なにはともあれスマホさえ持って出れば、お財布も定期券もはたまた証明書類もそこに内包されているからすべてが完結するようになった。もはやあなたの生活のためには必需品となり、それがない生活なんて考えられないような時代だ。位置情報も常に人工衛星と通信することで、正確に把握することができ、あなたが覚えきれないことをこの小さなマシンはまるであなたの召使のようになんでも引き出すことさえできるようになったね。

能力低下

巨大な人類のデータベースにいつでもどこでもアクセスができ、あなたはそれを覚えておくことすら不要になった。メモや走り書きを持って買い物にいくこともなくなったし、親友や大切な人の電話番号どころか、SNSのアカウント名すら覚えなくても大丈夫だね。そんな些細な情報がどうでもよくなったのは、超小型高速通信モバイル端末がすべてやってのけてくれるからだ。計算も予定も指でなぞれば瞬時に表示されるし、なんならあなたの声だけで教えてもらうことも可能だ。それはさっき言いましたよ、なんて冷たくあしらわれることもなく、何度でも同じことを正確に教えてくれるそれらは、もはやあなたの右腕どころか脳すら肩代わりしてくれている。ますますあなたは必死になって短いフレーズすら覚える場面が極端に減ったね。その結果なにかを必死に覚えなければならないことが皆無になって、記憶しておく能力がどんどん低下したとも言える。それこそ一昔前は気になるあの子の連絡先なんて一瞬見たり聞いたりしただけで、決して忘れることすらなかったというのにね。

知能の変革

あらゆることをそうやって外部記憶に委託するようになると、あなたはクリエイティブな活動に専念できるとされている。確かに、スマホの普及によって、仕組み的にはつまらないことを暗記する力はもはや不要なのはそうだろう。けれども、それに夢中になりすぎるがあまりに、それを見ている時間がほとんどのあなたの人生の時間とも言えるぐらい依存するようになった。依存とは快楽でそうなるわけではなく、暇になった時間を弄ぶための苦痛を和らげることで発生する。他にやることがなくなったが故に、特に楽しくもないゲームで暇つぶししたり、特に見たくもない会ったことのない他人のスキャンダルを眺めているだけの時間が加速度的に増えているありさまだね。それもこれもすべては開けゴマの呪文さえ唱えたならばいつでも引き出すことができるようになったからだ。いろんなことを知っている物知りおじさんなんてもはやなんの価値もないのはその通りだとして、それ以上の能力を発揮できる知的に豊かな時代になるはずなのに、実はゴシップが増えただけの人ばかりとはこれまた皮肉なことだとも言っていいだろうね。