バグってるわたし
あなたとわたし
ひとつだけだと、それ自体を説明することができないね。もうひとつ違うものがあれば、それぞれを説明することができる。比べられるからね。「わたし」は「あなた」と違うから「わたし」という概念が生まれる。「わたし」だけぽつんと一人っていう状況だと、「わたし」を説明するのは難しいね。世の中で説明できることの最小単位は「ふたつ」なのかな。そう、関係性があるから認識できるわけか。なるほど。「わたし」は「わたし」をみていると思っているけれど、「わたし」以外の何かを拠り所にしないと「わたし」を見ることはできないんだよね。ちょっと何言っているのかわからないかな。
あなたとわたしをみている誰か
でも、「あなた」と「わたし」だけがそこにいるってどう説明できるのかな。「わたし」と「あなた」しか見えない世界だと、そこに二人の存在があるとはわからないね。ということは、他の誰かが「あなた」と「わたし」だけがそこにいると見ているはずだよね。となると、「わたし」でもなく「あなた」でもなく、そこには「いない」けれど「いる」という、どうやらもうひとつの視点があるみたいだね。それをとりあえず、よくわからないどこかの誰かの視点とでもしておこうかな。
あなたとわたしとそれ以外
これで人生ゲームのプレイヤーのコマが揃ったね。ゲームの基本的な設定ができた。「あなた」と「わたし」と「それ以外」という視点さえあれば、この世の中のあらゆることが説明できるようになる。ということは「三つの目」ですべてのものが説明できる仕組みになっているわけよ。「わたし」から見える「あなた」はこんな感じで、「あなた」から見える「わたし」はそんな感じ。「あなた」と「わたし」の二人を見つめている「誰か」はあんな感じ。3Dグラフィックスなんかでも、仮想カメラの位置と数でいろんなシーンを表現できるしね。なるほど。完璧じゃないの。ん?ちょっと待てよ。「あなた」を見ているのは「わたし」で、「わたし」を見ているのも「わたし」で、そして二人がそこにいることを見ているのも「わたし」だよね。あれ、結局「わたし」しかいないじゃないの。その3Dグラフィクスを見ているのも、設定しているのも、コードを打ち込んでいるのも「わたし」だからね。なんか変だな。
わたしの正体
「わたし」しかいなければ「わたし」が何者かを説明することはできないって言ったけど、それは間違いってことかな。「あなた」も「わたし」も「それ以外」も全部「わたし」が見ている。「わたし」は「わたしだよ」って誰が見ているのか。「わたし」とは違う「なにか」が見ていないと「わたしだよ」ってわからないんじゃない?ということは、「わたし」とか「あなた」とか「他の誰か」を見ているのが本当の「わたし」なのかな。あれ、おかしなことになったぞ。本当の見ている「わたし」は、そこに「わたし」と思っている何かを「わたし」と見ていることになるね。「わたし」は「わたし」ではないってこと。「わたし」さんは何者かわからなくなってきたね。こりゃ致命的なプログラムの「バグ」だな。たぶん「わたし」の設定が間違っているんだろうね。早急にアップデートしてもらわないとね。ミスは誰にもあるよ。ミスっていることさえ知っていればそれなりに楽しめるからね。