そこにあるもの
陽だまりの中で
穏やかな日光に照らされて、あなたはふとこれまでの人生を振り返る。何も変わっていないようで、とても変わったような変な感覚でいる。なぜかあくせくしていた毎日を過ごしているふとした瞬間に、とても時間がゆっくりと流れているような妙な時間だ。光に照らされた窓の外をじっと見つめている。そういえばこれまでもそんな時間があったような、なかったような感じを思い出している。そこにはただ見ている風景が広がっていて、何も争い事がないような不思議な時間だ。もちろん、すぐにでも現実に引き戻されるのは知っているけれども、その時間を少しだけ楽しんでいるね。そんなふうに人生を過ごすことができたなら、これほど幸せなものはないだろうと思う一方で、ずっとこれだといずれ飽きちゃうかななんて思っている。そこであなたを呼ぶ声が聞こえた。そうやって、いつもの日常に舞い戻るわけだ。
触れていたこと
その瞬間はおそらくぎっしりと詰め込められたスケジュールのほんの少しの時間だけれども、なんだかこの世の本質に触れた気分にもなる。なんとなく慌ただしい世間を一歩俯瞰して見ているような感覚だね。もっと言えばいつもの騒がしい人たちが一瞬消えたようなそんな瞬間とも言える。そこにいたあなたはもういない。そこにいたという確証すらよくわからない。でも確実にあなたの目には穏やかなこの世の瞬間を垣間見たわけだ。それであなたはとても平穏で安心していたひとときだけれども、実はずっとそうだったんじゃないかとも思っている。ずっとあなたは知らないところで守られていて、不安や恐怖におびえていた毎日がとても馬鹿らしく思えたわけだね。そう、何も心配することもないし、あなたはあなたで楽しくやっていればいいだけのことだと気がついた瞬間でもあったのは、騒がしい世の中だと思っていたけれども、実はとっても穏やかなものだという核心に触れたからかもしれないね。
気づき
そうやって徐々に人はこの世はなんたるものかという考察を終える。終える頃には人生も終えることになるだろう。その前にすこしばかり早めにそれがわかれば、その少しの時間はとても穏やかなひとときとなるわけだ。そうやって気づきを得たとき、あなたはなにか別のものになるわけでもないし、そもそも一世代の幕が降りるだけだね。次世代へバトンタッチするときにあなたは何を伝えることができるだろう。この世は厳しくて生き馬の目を抜くような競争社会だから、十分に力を蓄えて気をつけなさいと言うのか、それともそれほどがむしゃらにならなくても、なるようになるだけだから安心して過ごしなさいというのか、そのどちらでもすべてはあなたの経験をベースにするしかないね。極端な話どちらか一つだけの経験でもいいし、両方経験していてもいい。そんなことよりももっと大切なことは、すべては移り変わり続けるのだからやっぱりその変化を見つめているだけでいいということかな。